『図書館の魔女』(高田大介)を読みました。
鍛治の里に暮らす少年キリヒトは、師の命により、大陸最古の図書館を統べるマツリカに仕えることになる。古今の書物を繙き、数多の言語を操って策を巡らせるがゆえ、「魔女」と恐れられる彼女は、自分の声をもたないうら若き少女だった。本を愛し、言葉の力を信じるすべての人に!
ファンタジーに分類されており、主人公のひとりは魔女と呼ばれる少女ですが、これは言葉と知識と知恵が世界を動かす話です。
高い塔の主・マツリカは口を利くことができません。そのマツリカの「声」として、キリヒトという少年が随身になるところから物語は始まります。
マツリカは手話を用いて意思を伝えるのですが、物語の端々から彼女の内の「言葉」が溢れてきて、書く・話すといった表現するということの何たるかを考えさせられます。マツリカの操る鮮やかな手話が瞼の裏に浮かぶような気持ちでした。
とても面白かったので皆さまぜひ、と誰彼かまわず勧めたいところなんですが、上巻だけで650ページの超大作なんですよね。難解で古い言い回しも多く、かなりとっつきにくい部類の小説です。緻密に組み立てられた美しい文章を一字一句追おうとすると、非常に脳のリソースを消費します。日常的に活字に触れている自負のある私自身でさえ、タイトルどおりまさしく「戦い」のように、最後まで必死になって読みました。
分厚い、でも面白かった! という作品だと『鹿の王』(上橋菜穂子)、『新世界より』(貴志祐介)あたりがぱっと思い浮かびます。日常的に読書をしている人こそ実感することだと思うのですが、本気の読書って気力も体力もかなり消耗するんですよね。これはゲームでもそう。
忙しくなったり、心に余裕がなくなったりしてくると作品に真摯に向き合う体力がなくなってしまって、その結果お手軽に「体験」だけを得られるweb小説やソシャゲに手が伸びるようになってしまう。はい、繁忙期はなろう系小説ばかり読んでました….…。
「花束みたいな恋をした」で仕事に疲れ果てた主人公が彼女に「ゼルダやらないの?」と聞かれて「もうパズドラくらいしかできない」と答えるシーン、私が最高潮に病んでた時、テトリスしかできなくなったのを思い出してゾッとした。パズルゲームに没頭するのはメンタル崩壊の前兆かもしれない。
— 深爪 (@fukazume_taro) 2021年2月17日
刺さりすぎて耳も心も痛い。
気力の部分もそうなんですが、普段から作品と向き合う体力をつけておきたいなと感じました。このままずるずると、スナック菓子を食べるようにお手軽な作品しか楽しめなくなるのは、老いることよりもずっとおそろしいです。活字との戦いは続く。